「親の介護で辞めます」と突然言われる前に。2025年4月から、介護に直面した職員への個別の案内や、40歳での情報提供が事業主の義務になりました。医療ソーシャルワーカー歴11年、社会福祉士・キャリアコンサルタントでもある札幌の社会保険労務士が、職員を辞めさせない両立支援の進め方を解説します。

「ベテランの看護師から、急に『親の介護があるので辞めたい』と言われた」「相談してくれれば何かできたのに、聞いたときにはもう本人が決めていた」。病院や介護施設の管理者の方から、こうしたお声を伺うことがあります。人を支える仕事をしている職員ほど、自分の家族のことは一人で抱え込みがちです。今日は、職員の介護離職を防ぐために、職場ができることをお話しします。

介護離職は「突然」ではなく、「言い出せないまま」進んでいる

退職の申し出は突然に見えても、実際には、親の通院の付き添いや夜中の電話などが、少しずつ積み重なっていることがほとんどです。「職場に迷惑をかけたくない」「休んだら戻る場所がなくなる気がする」。そう思ったまま、両立の方法を知らずに「辞めるしかない」と結論を出してしまう。介護離職の多くは、相談の入口が見つからないまま進んでいきます。

2025年4月から、仕事と介護の両立支援が事業主の義務に

育児・介護休業法の改正で、2025年4月1日から、介護離職を防ぐための取り組みが事業主の義務になりました。大きくは次の3つです。

  1. 介護に直面したと申し出た職員に、介護休業などの制度・申出先・介護休業給付について個別に知らせ、利用の意向を確認すること
  2. 職員が40歳になるタイミングで、これらの情報を前もって知らせること
  3. 研修や相談窓口の設置など、制度を利用しやすい環境を整えること

40歳は、介護保険料を納め始める年齢でもあります。「まだ先の話」と思えるうちに知っておくことが、いざというときの備えになります。

介護休業は「介護をする休み」ではなく「体制を整える休み」

職員の皆さんにぜひ知っておいてほしいことがあります。介護休業は、対象家族1人につき通算93日まで、3回に分けて取ることができます。ただし、93日で介護のすべてを担う、という意味ではありません。厚生労働省も、介護休業を「介護の体制を整えて、働きながら対応できるようにするための休業」と位置づけています。ケアマネジャーとの相談や介護サービスの手配など、そのための準備期間なのです。

このほか、年5日(対象家族が2人以上なら10日)の介護休暇は、時間単位でも使えます。こうした「辞めずに続ける道」を知っているかどうかで、職員の選択は大きく変わります。

病院の相談室で出会った「仕事を辞めるか迷うご家族」

私は社会保険労務士になる前、病院で11年間、医療ソーシャルワーカーとして働いていました。退院や介護サービスの調整のご相談の中で、「仕事を辞めて親をみるしかないのでしょうか」と迷うご家族に、何度もお会いしました。介護サービスの使い方や、地域包括支援センターなどの相談先を一緒に確かめていくと、「辞めなくても何とかなるかもしれない」と表情がやわらぐ方が少なくありませんでした。情報と相談先があるだけで、選べる道は広がる。キャリアコンサルタント・社会福祉士としても、そのことを大切にしています。

「職員を守って、辞めさせない」職場づくりのもう一つの柱

前回の記事「【札幌】「認知症だから仕方ない」で終わらせない」では、患者さんやご家族からのカスハラについて、職員を一人で抱え込ませない体制づくりをご紹介しました。介護離職の防止も、根っこは同じです。職場の困りごとも家庭の困りごとも「一人で抱えなくていい」と伝わることが、職員を守り、辞めさせないことにつながります。たとえば、次のような工夫です。

  • 制度の案内は配って終わりにせず、管理者が「何かあったら早めに声をかけてね」と一言添えて渡す
  • 日ごろの面談で「ご家族のことで気になることはありませんか」と聞ける関係をつくっておく
  • 介護の事情を話した職員が働きにくくならないよう、シフトや業務の調整をチームで考える

医療・介護の職場は、介護の知識を持つ人が集まる場所です。その強みを職員自身のためにも活かせると、もっと働き続けやすい職場になります。

札幌市で介護離職防止・両立支援のご相談はOffice You Key 社会保険労務士事務所へ

「法改正への対応ができているか確認したい」「介護に直面した職員との面談の進め方を知りたい」という札幌市・北海道の医療機関、介護・福祉施設、企業の皆様へ。Office You Keyでは、医療ソーシャルワーカー歴11年の社会保険労務士が、就業規則や職員への案内資料の整備から、管理職向けの研修、職員の個別相談まで一貫してお手伝いします。企画・お見積りは無料で承っております。まずはお気軽にご相談ください。