「急な欠員を、スキマバイトで埋められたら助かる」。便利な一方で、雇う責任は施設の側にあります。契約の成立時期やキャンセル、休業手当、労災など、使う前に確かめたい点をまとめました。医療ソーシャルワーカー歴11年、社会福祉士・キャリアコンサルタントでもある札幌の社会保険労務士が、スポットワークの労務の注意点を解説します。
「急に一人休んでしまった。今日だけでも誰か来てもらえたら」「アプリで募集すれば、あとはお任せでいいのでは」。そんなふうに感じていませんか。短い時間だけ働ける「スキマバイト(スポットワーク)」は、人手が足りない介護現場の心強い選択肢になりつつあります。一方で、厚生労働省は2025年7月、スポットワークを利用する事業主に向けて、労務管理の留意事項をまとめたリーフレットを公表しています。今日は、介護現場でスキマバイトを使う前に知っておきたい労務の注意点をお話しします。
雇うのは「アプリ」ではなく「施設」です
スポットワークでは、アプリなどの仲介サービスを通じて働く人と出会いますが、労働契約を結ぶのは、働く人と施設(事業主)です。そのため、労働基準法などを守る責任は施設の側にあります。
とくに気をつけたいのが、労働契約がいつ成立するかです。厚生労働省のリーフレットでは、面接をせず先着順で決まる求人の場合、特別な合意がない限り、働く人が応募した時点で契約が成立すると一般的に考えられる、とされています。「まだ来てもらっていないから、契約前」とは限らないのです。
また、仕事内容や時間、賃金などの労働条件を書面などで示すのは、事業主の義務です。スポットワーカーは期間を決めて働く「有期雇用」にあたるため、昇給・退職手当・賞与の有無や相談窓口もあわせて示します。さらに2026年10月1日からは、「正職員との待遇の違いについて説明を求めることができる」ことも、示す事項に加わりました。仲介事業者が代わりに交付する場合も、きちんと交付されているか、新しい項目も含めて内容が正しいかを施設で確かめておきましょう。
キャンセル・早上がりと休業手当
利用者さんの予定が変わり、思ったより人手が足りた日もあるかもしれません。契約が成立した後に、施設の都合で休んでもらったり、早く上がってもらったりする場合は、休業手当(労働基準法第26条)の支払いが必要になります。リーフレットでは、休業手当の代わりに、約束した賃金を全額支払うことも差し支えないとされています。
また、施設の都合による直前の取り消しは、働く人が別の仕事を探す時間を奪うおそれがあるため、不適切とされています。キャンセルの期限や理由は、働く人にだけ不利にならないよう、余裕をもって決めておくと安心です。
あわせて、次の点もおさえておきましょう。
- 制服への着替えや業務後の片付けなど、施設の指示で行う時間は労働時間になる
- 施設の指示による待機の時間も労働時間になる
- 示した賃金を一方的に減らしたり、支払うとした交通費を払わなかったりすることはできない
労災・安全・ハラスメント対策も、ほかの職員と同じ
スポットワーカーが仕事中や通勤途中にけがをした場合は、働いた施設の労災保険から給付を受けられます。保険料は事業主の負担です。雇い入れ時の安全衛生教育や、ハラスメントの相談窓口の周知なども、ほかの職員と同じように求められます。2026年10月1日からは、利用者さんやご家族などからのカスタマーハラスメントへの対策も、事業主の義務になりました。その日だけ来る人にも、困ったときに誰に伝えればよいかを伝えておきましょう。
介護の現場には、移乗や入浴介助など、けがにつながりやすい場面があります。初めて来る人にどこまでお願いするか、事前に線を引いておくことが、働く人と利用者さん双方の安全につながります。
初めての職場で働く人の心細さ
私はこれまで何度か転職を経験し、スポットのアルバイトで働いたこともあります。初めての職場では、「どんな職員さんがいらっしゃるのかな」「私にできる仕事だろうか」と、不安が尽きませんでした。そんなとき、職員さんから「今日からよろしくね」「わからないことがあったら、何でも聞いてね」とひと声かけてもらえるだけで、ずいぶん気持ちが軽くなったのを覚えています。
だからこそ、管理職の皆さんには、新しく来る方の出勤初日にこそ、あたたかいひと声をかけてあげてほしいと思います。スキマバイトで来る方にとっては、毎回がその職場での「初日」です。
「また来たい」と思える受け入れ方
スキマバイトの人は、その日初めて施設に来ることがほとんどです。トイレや休憩場所、困ったときに声をかける人、お願いしたいこと・しなくてよいことを1枚のメモにまとめておくだけでも、受け入れはずっとスムーズになります。
迎える職員にとっても、「誰が説明するか」が決まっていると負担が軽くなります。スキマバイトを「穴埋め」で終わらせず、「また来たい」と思ってもらえる職場づくりのきっかけにしていきましょう。
スポットワークを使うときの労務管理の注意点は、厚生労働省のリーフレット「知らない」では済まされない「スポットワーク」の労務管理にくわしくまとめられています。
札幌市でスポットワークの受け入れ・労務管理のご相談はOffice You Key 社会保険労務士事務所へ
「スキマバイトを使い始める前に、ルールを確認しておきたい」「受け入れの手順や就業規則を整えたい」という札幌市・北海道の医療機関、介護・福祉施設、企業の皆様へ。Office You Keyでは、医療ソーシャルワーカー歴11年の社会保険労務士が、労務管理のルールづくりから、受け入れる職員向けの研修まで一貫してお手伝いします。企画・お見積りは無料で承っております。まずはお気軽にご相談ください。
